デジタルアーカイブ学会第3回研究大会で、コンテンツとアーカイブの制作管理、デザイン手法について発表
2019年3月15日・16日の2日間、弊社が賛助会員として参加しているデジタルアーカイブ学会第3回研究大会が開催されます。本大会におきまして弊社代表社員の大橋が各共同発表者とともに、以下2本の発表を行います。研究大会にご参加される方は、ぜひ弊社の発表にもお立ち寄りください。
[口頭発表 B15] 全国紙における大量のコンテンツ制作管理とアーカイブ化
毎日新聞社コンテンツ管理システムの全面刷新を事例として
共同発表者:平川 裕蔵(フューチャー株式会社 Technology Innovation Group)
発表要旨
毎日新聞社では2018年12月、新聞制作のコンテンツ管理システムを全面的に刷新した。この刷新と同時に、それまで紙面を降版したあとにインターネットなどに配信する「紙面中心・ベルトコンベア型」だった業務フローは、紙面と各媒体向けの記事制作・リアルタイム配信を同時に行っていく「紙とデジタルの同時並行展開・分散型」業務フローへと大きく舵を切ることになる。
新聞の制作工程には多くの人が関わり、多数の中間成果物・最終成果物が発生している。さらに近年、インターネットやスマートフォン、AIスピーカーの普及によりコンテンツの配信先や表現手段が以前にも増して多様化し、それぞれのニーズにあわせて情報を編集加工し、より迅速にコンテンツとして提供することが強く求められるようになったことで、最終成果物のバリエーションも増加している。そのため、原稿・写真・映像・紙面などの多種多様なデータを素早く参照し、円滑に二次利用・販売できるように、適切な素材管理体制を構築・運用することが新聞社にとって中心的な命題となっている。
本発表では以上のような状況を踏まえ、新聞社がどのように膨大なコンテンツの制作とデータ管理に取り組んでいるのか、コンテンツ管理システム刷新の過程で検討されたコンテンツ制作、アーカイブ収録管理、利活用における課題と工夫、「紙とデジタルの同時並行展開・分散型」業務フローの考え方について、全国紙の大規模なコンテンツ管理・アーカイブシステムの全容をお見せしながら紹介する。
[ポスター発表 P02] デジタルアーカイブをデザインする
「まだそこにいない」利用者に共感し本当に使われるサービスを作るために
共同発表者:五十嵐 佳奈(ゼロベース株式会社)
発表要旨
人間工学やサービスデザインの分野では、人を機械に習熟させるのではなく、機械を人に合わせることを目指し、様々な研究と実践が積み重ねられてきた。近年では産業領域においても、UXデザインやデザイン経営といったワードで、デザインの重要性に注目が集まっている。これらの分野の専門家が第一に意識するのは、システムの設計者はまず十分なユーザ理解を目指さなければならないという原則に立脚し、デザインプロセスを丁寧に組み立てることである。
どんなサービスも開発する時点では「まだそこに利用者はいない」。ましてや今後デジタルアーカイブを市民へと開いていく中では、アーキビストや研究者などの「すでにそこにいる」利用者以外の人々の眼差しを共感的に理解し、どのようなシステムやサービスを設計すれば新たな利用者が使い続けたいと感じるのか、あるいはデジタルアーカイブの使い方に広がりを持たせうるのか、必要な機能やインタフェースの有効性などを反復的に検証していく必要がある。
本発表では、ユーザリサーチに始まる各種デザイン手法を整理し、現場の必要に応じて誰もが導入できるデジタルアーカイブのデザインプロセスの標準化について検討する。平成30年4月にデジタルアーカイブアセスメントツールが発表されたが、デザイン思考や人間中心設計の観点から捉えると、これは機械的に達成すべき「チェックリスト」ではなく、適切なデザインプロセスの結果、必然的に達成される「アウトプット」として位置づけられる。この観点からデジタルアーカイブアセスメントツールを利用者の状況を踏まえて再解釈することができれば、サービスの多様性と利活用の可能性は大きく広がると期待できる。
付記
各発表にあたっては、関係する各社の情報開示に関する確認および許諾を受けています。